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東京高等裁判所 昭和37年(ネ)1339号 判決 1962年12月28日

控訴人 フランシス・ロレイン・ブラウン

被控訴人 ジエイムス・ウイリアムズ・ブラウン

主文

原判決を取消す。

本件を東京地方裁判所に差し戻す。

事実

控訴代理人は、原判決を取消す、控訴人と被控訴人を離婚する、訴訟費用は被控訴人の負担とするとの判決を求めた。

控訴代理人の陳述した事実並びに証拠の関係は、同代理人において、控訴人は日本に住所を有している。すなわち、控訴人は昭和三十二年八月十四日観光査証によつて来日し、昭和三十三年六月六日商用査証を得て再入国するため一旦帰米したけれども、同月十三日これを得て同月二十七日来日し、自来現在まで日本に居住しているのであつて、その間日本を離れたのは一、昭和三十五年十月十八日から同年十二月三日まで母の急病を見舞うため帰国し、二、昭和三十六年十月六日から同月十八日まで及び同年十二月三十一日から翌三十七年一月七日まで各旅行し三、同年四月三日から七日まで商用のため旅行しただけである。そして初の来日当時は小金井に居住したが昭和三十四年三月から現在に至るまで肩書地の借家に居住しているものであつて、前記のように短期間離日した間も家具などは右借家に置いたままであつた。また、昭和三十三年一月以来現在まで日本ゼネラル・エレクトリツク株式会社に秘書として勤務しており、昭和三十五年八月三十日には日本における自動車運転免許を得ている。このように、控訴人は日本に相当長期間居住し、現住所から他に移転する意思なく、ここを家庭として家具その他の財産をここに置いてあるのであるから、日本に住所を有するものといわなければならないと述べ、甲第五号証の一ないし五、第六号証を提出し、当審における控訴人本人尋問の供述を援用したほかは、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。

被控訴人は、公示送達による適式な呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭しない。

理由

原審並びに当審における控訴人本人尋問の供述、これによつて成立を認める甲第三号証の一、二、第五号証の一ないし五、第六号証及び公文書であるから真正に成立したと認める同第四号証を総合すれば、控訴人がその住所に関して主張している事実をすべて認めることができる。そして、右認定の事実関係の下においては、控訴人が日本に住所を有するものであると解するのが相当である。

ところで、外国人相互の間の離婚訴訟においては、被告が日本に住所を有せず、かつ、かつてこれを有したことがなくても、原告が日本に住所を有する以上、少くとも、本訴のように被告が所在不明であり、また被告が原告を悪意で遺棄したことを離婚請求の原因とする場合にあつては、日本の裁判所は右訴訟について裁判権を有すると解するのが相当である。

よつて、控訴人は日本に住所を有しないものであるとし、日本の裁判所が裁判権を有しないものとしてその訴を不適法として却下した原判決は、これを取消すべく、民事訴訟法第三百八十八条に則り主文のとおり判決する。

(裁判官 板垣市太郎 村木達夫 元岡道雄)

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